病院・クリニック等の医療機関における法的トラブルについて、対「スタッフ」、対「患者さん」、その他の場面に分けて解説いたします。
スタッフとの労務トラブルについて
医療機関もスタッフを雇用して運営している以上、スタッフとの間の労務トラブルは、他業種同様避けて通れない問題の1つです。
例えば、いうことを聞かず、他のスタッフと日常的にトラブルを起こしてしまうスタッフがいたとして、段階を踏まず、突然に、解雇を行ってしまえば、後に裁判等で争われた時、大きな問題へと発展します。
まず、裁判等紛争の対応に膨大な時間を割かれて、経営者や人事担当スタッフの大きな負担となりますし、その結果当該解雇が不当解雇・解雇無効と判断された場合、未払賃金の支払等、多大な経済的負担を負ってしまうこともあります。
他方で、そのようなリスクを過度に恐れ、セクハラ・パワハラを行う従業員に代表されるような問題従業員を放置してしまうと、逆に、被害を受けたスタッフに対する安全配慮義務違反として、損害賠償請求を受けてしまう可能性があります。また、問題従業員のせいで、被害に遭った有能なスタッフが退職するような環境を放置することは出来ませんので、何らかの対応をせざるを得ません。
そのようなとき、自己判断で対応しようとすると、方向性が定まらずに問題をより悪化させてしまったり、労働組合等外部の団体の介入を招くなどして、トラブルが長期化してしまうこともあり得ます。
その点顧問弁護士を依頼しておけば、問題が起こった際すぐに相談をして、問題解決についての具体的な道筋を立て、解決に向けて進めていくことができます。また、実際に対応を行う担当スタッフが問題を抱え込んでしまわないようにすることができますので、スタッフの負担軽減にもつながります。
そればかりでなく、顧問弁護士には日常的に業務に関する相談をすることが出来ますので、小さな問題を起こしているスタッフ(これから問題を起こしそうなスタッフ)がいる場合には、あらかじめ共有しておくことが出来ます。
そうすると、日頃からどのようなことに注意をしておけば良いのか、問題が発生した場合はどのような対応をすれば良いのかについて、あらかじめ備えることができ、問題が起こった場合にも落ち着いて対応することが出来ます。
モンスター従業員という言葉もある様に、労務問題に悩まれている経営者の方はとても多く、裏を返せばそのようなトラブルは世の中にあふれているということでもあるので、具体的な問題が発生した場合に焦らないためにも、あらかじめ備えておくことを検討しましょう。
また、医療関係者は、人の健康や生命に関わる仕事をしている以上、どうしても、不測の事態で休日や夜間の仕事が発生せざるを得ず、未払残業代の請求を受けやすい業種であるといえます。
経営者としては、きちんと勤怠管理を行い、スタッフとの関係も円満だと思っていたにもかかわらず、何らかのトラブルをきっかけとして、突如、スタッフから、今までの未払残業代を支払って欲しいなどとして多額の請求をされてしまうことがあり得るのです。
このようなことを防ぐために、厳密な勤怠管理を行うのはもちろんのこと、変形労働時間制等実態に合った制度の導入を検討することが必要な場合もあります。
スタッフの勤務実績を調査・把握したうえで、変形労働時間制導入を決めた場合には、対象者や労働時間の決定、就業規則の見直し、労使協定の締結、労働基準監督署への届出、労働者への周知等、必要な手続きが定められています。
このため、導入を検討する場合には、顧問弁護士と相談しながら進めていくと安心です。
以上のとおり、スタッフとの労務トラブルに備えるためにも、顧問契約をご検討いただければと思います。
労務問題について、詳細は、こちらもご覧ください。
患者さんとのトラブル(医療費未払・クレーム)について
医療機関においては、顧客である患者さんとのトラブルについても、良くある問題です。
未払医療費
高額な入院医療費や、死亡が予想される患者さんの医療費、訪問看護等継続的診療で発生する医療費等、様々な場面において、医療費未払問題は発生します。
医療費の支払いは、医療機関にとっての収益源である以上、未払医療費問題は放置することの出来ない重大な問題です。
最初の契約時に、患者さんに連帯保証人・身元保証人を立ててもらったり、また、未払となった場合どの段階でどのような手続きを踏むのか等について、あらかじめ、顧問弁護士と相談して対応を決めておくことで、いざ、未払が起こったとき、また、起こりそうなときに、担当者の方でスムーズに対応することが可能となります。
問題発生時、いったんは担当者の方から患者さんに医療費の支払いを催告し、それでも支払がなされず、滞納が何回か続いた段階で、弁護士名義で内証証明を出し(この段階で解決することも多いです。)、それでも解決しない場合は法的手続きに移っていくというのが、典型的なパターンと思われます。
売掛金回収(債権回収)については、こちらもご参考ください。
クレーム
医療機関を経営していると、「スタッフの態度・対応等の接遇に関するクレーム」、「入院患者の食事・外来の待ち時間等サービスに関するクレーム」、「治療や手術の内容・結果に関するクレーム」等、一定の確率で、患者さんからクレームが発生する場合があります。
クレーム対応は、やり方次第で、サービスの向上につながり、企業を発展させることに寄与しますが、カスタマーハラスメントという言葉にも代表されるとおり、悪質クレームは社会問題にもなっていますので、時には毅然とした対応が必要になることもあります。
クレーム対応は辛い業務であることは確かですので、これを病院の先生やスタッフの判断に委ね、任せきりにしておくと、判断を誤って不利な方向に働いてしまうこともありえます。
このため、患者さんからクレームを受けた場合には、その対応を顧問弁護士に相談したり、良くある類型のクレーム内容については、対応をマニュアル化しておくことも考えられるでしょう。
とくに、モンスターペイシェントといえるレベルのクレーマーへの対応を、スタッフが単独で行っていると、精神的に疲弊して本業の生産性が落ちてしまいますし、長期にわたる場合には、スタッフの離職も招いてしまいますので、必ず複数人で毅然とした対応を取ることが必要となります。また、応召義務との兼ね合い等難しい問題もありますので、顧問弁護士と連携が特に重視されますし、場合によっては、交渉窓口を顧問弁護士へ変更することが必要となる場合もあるでしょう。
医師・スタッフが安心して、医療機関の本来業務である患者さんの診察・治療を通じた人助けに専念できる環境を整えることは、医療機関の経営者の重要な役割であるといえます。
そのために、あらかじめ顧問弁護士を依頼し、リスクに備えておくことをおすすめいたします。
クレーム対応については、こちらもご覧ください。
その他の法律問題
医療機関を経営していると、上記に代表されるトラブル以外にも、経営上や私生活上の様々なトラブルに見舞われる場合がありますし、それらのトラブルに備えるための契約書や就業規則の整備も重要となります。
例えば、病院の刑事事件(医療過誤等)、病院に対する誹謗中傷等のトラブルについて、顧問弁護士に相談することが出来ますし、就業規則や契約書(ex.訪問看護契約、入院誓約書のほか、病院所有不動産に関する契約等広く含)について、リーガルチェックを経ておくことで安心して日々の業務にのぞむことが出来ます。 そればかりでなく、経営者や従業員の私生活上のトラブル、たとえば、離婚、交通事故、相続等の一般民事上のトラブルについても、プランによっては対応時間に上限があるものの、弊所においては顧問弁護士に相談することが可能となります。
病院経営上のトラブル以外の私生活上のトラブルに広く対応出来ることによって、経営者やスタッフが安心してその職務に専念できます。このように、顧問弁護士への依頼は、スタフに対する福利厚生という側面もありますので、病院・クリニック等の医療機関につきましては、弊所の顧問弁護士サービスをご検討下さい。
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