IT企業においては、各企業で先端IT技術の活用に向けたIT人材の需要が増大するほか、あらゆる企業のDX推進等に伴い、IT企業への外注も増加しており、人手不足はますます深刻化するとされています。このため、長時間労働をはじめとする様々な労働問題が発生しやすい業種であるといえます。
また、業務委託契約、秘密保持契約等各種契約を結ぶ場面も多く、契約書整備の必要性も高い業種といえるでしょう。
長時間労働の弊害
長時間労働の弊害はどの業種にもいえることですが、生産性が低下するのみならず、従業員の心身の不調・離職率の上昇等により、悪循環に陥ってしまうこともあります。
心身の不調・過労死等が発生し、それが業務上発生したと認められる場合は、労災にあたる可能性が高く、企業の方も法的責任を負うことになります。
それだけではなく、心身の不調で退職した従業員などから、多額の未払残業代の請求を受けることも考えられます。
最近では、インターネット広告等の影響もあり、退職した社員が弁護士に依頼して、未払残業代を請求する事案が急増してきています。
長期間にわたり、従業員の勤怠管理が適切に行われていなかったということになれば、一人の従業員からの請求であっても、その額は数百万から1000万円以上に上ることも珍しくありません。このような請求は、中小企業にとっては、経営をも脅かすような事態であるといっても過言ではありません。
このため、自社従業員の勤怠管理を適切に行う必要があるということはいうまでもありません。
これに対しては、時間外労働を減らしたり、適切な残業代を支払おうと思っても限界があるし、徹底していたのでは、かえって経営が成り立たなくなるというお声も頂くところです。
固定残業代制度の導入
この点については、固定残業代制度の導入を検討してみることも有効でしょう。
すなわち、あらかじめ定められた一定の金額により時間外労働、休日及び深夜労働に対する各割増賃金を支払うという残業代支払制度で、慢性的な時間外労働が発生する業種においては、次のようなメリットがあります。
すなわち、従業員としては、想定されている残業時間数よりも早く業務を終えることで、実際に働いた時間数より多くの給与をもらえるというメリットがあり、これによって、業務効率を上げて仕事をすることが想定されるため、残業時間の削減につながるというメリットがあります。また、毎月の支払賃金が安定する等のメリットがあります。
もっとも、制度を導入しても、想定した時間を超えた場合には超過分については別途で残業代を支払う必要があるなど、労働基準法等の法令に違反することは出来ません。また、雇用契約書・就業規則には、固定残業制の導入やその内容を明示しておく必要があるなど、導入には、厳格な条件があります。
このため、会社における従業員の労働時間等の現状をしっかり把握した上で、導入の適否判断し、導入するとして固定残業代を何時間分にするのか等、慎重に検討を行ったうえで、適切な手続き(就業規則の改正等)を経る必要があるでしょう。
固定残業制を導入しているにもかかわらず、関連するルールがない状態では、残業代が正確に支払われていると認められない恐れがあり、労働基準法違反となる可能性もあります。
このため、固定残業代の導入をご検討の場合、専門家である弁護士にご相談いただければと思います。
偽装請負問題
・自社の従業員と下請けの区別
IT業界においては、大規模なプロジェクトにおいては、数次の下請け業者が参画して進められることも珍しくありませんが、労働基準監督署から、作業の進め方が偽装請負ではないかとして、調査の対象となることがあります。
すなわち、IT業界の場合、成果物を完成させるには、委託者と受託者の意思疎通を十分にする必要があります。委託者からすれば、受託者の個々の担当者に対して直接的な指揮命令を行った方が業務を管理しやすく、業務の効率化を図ることができますし、受託者からしても、委託者から直接指揮命令を受けながら業務遂行した方が、より委託者の意向に沿った成果物を残すことが出来ます。このため、偽装請負が発生しやすい業種といえます。
このように偽装請負は委託者・受託者双方にとってメリットがある部分がありますが、これを許してしまうと、雇用者としての管理責任が曖昧になってしまい、受託者側の労働環境が悪化してしまいます。このため、偽装請負に対しては、様々なペナルティが課されてしまいます。
例えば、労働者派遣法に違反するものとして行政機関からの指導・勧告・公表処分や、刑事罰に課される。委託者・受託者双方助成金の申請が出来なくなる等です。
このような偽装請負を防止するためには、一般論として、
・委託者と受託者の役割分担の明確化
・双方の責任者を通じた連絡ルートの一本化
・双方の意思疎通は、双方の出席する定められた会議内で実施する
等です。
ただし、これらを形式的に適用してしまうと、例えば現場で一切の指示が出来なくなる等、作業が回らなくなる可能性もあります。このためどこまでがぎりぎり許されるのかを見極めながら現場を回す必要があります。
この点については、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年労働省告示第37号)が参考になります。
こちらについては厚生労働省のホームページに詳細な記載がありますので、こちらをご参考ください。https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gigi_outou01.html
こちらからも分かるとおり、偽装請負と評価されてしまうかどうかについては、かなり微妙なところもありますので、自社の業務遂行方法に問題がないかについてご不安がおありの場合には、一度専門家である弁護士にご相談いただければと思います。
就業規則・契約書等各書類のリーガルチェック
インターネットで見つけた契約書のサンプルを使っているが、自社においてこれが適切なのかが分からない、就業規則が現在の実態に合っていないか不安である、また、就業規則自体がないといったご相談を受けることがあります。
ですが、後述のような労務トラブルに対応するためには、就業規則や賃金規定をきちんと整備することが不可欠です。また、請負契約書等の各書類についても、適切に取り交わしておかないと、後になって「言った、言わない。」のトラブルになる場合もありますし、契約書の内容が自社に不利益となっている場合もあり得ます。
当事務所においては、情報通信業者様の社内規定をチェックして、リスクの有無や見直すべき事項について助言し、また、修正案を提示したり、契約書の内容チェックや新規作成も行っておりますので、自社の書類の内容にご不安がおありの企業様はご相談ください。
書類のリーガルチェックについて、詳細は、契約書のページをご覧いただければと思います。
・労務トラブルへの対応
弊所では、辞めた授業員から未払残業があるとして請求を受けている、問題従業員がおり、辞めてもらいたいがどう進めて良いか分からず困っている等の、労務トラブルへの対応を行っております。
労務トラブルの場合、問題が起こった場合への対応はもちろんのこと、問題が起こらないようにすることが大切ですので、労務管理においてご不安がおありの場合は少しでもお早めにご連絡ください。
労務問題についての詳細は、労務問題のページをご覧いただければと思います。
・売掛金回収
制作が完了したにも関わらず元請会社が代金を支払ってくれない、お金を貸したにもかかわらず、支払期限を過ぎても返してもらえなくて困っている等、事業を行っているとどうしても債権回収のお悩みが出てきます。
債権回収には様々な手段があり、弁護士にご相談いただけることでスムーズな回収が図れることがありますので、ご相談いただければと思います。
売掛金回収については、債権回収のページもご覧いただければと思います。
上記以外にも、弊所では、情報通信業を営む企業様へ各種法的のサポートを行っておりますが、顧問契約をいただいている企業様におかれましては、プランによって違いはありますが、顧問料の範囲内で対応出来ることも多々ありますので、弊所の顧問契約料金表もご確認いただければと思います。