会社で仕事をするうえで、経営者や従業員の頭を悩ませるのが問題社員の扱い方です。
「とある従業員に協調性が全くなく、このままだと会社の大損害にもつながりかねない」
このような悩みを抱えており、対処法を考えている企業責任者も少なくないでしょう。この記事では、協調性のない社員が解雇できるかどうかを解説します。
また解雇を行ううえでの注意点も詳しくまとめるので、責任者は内容をしっかりと押さえてください。
協調性がない問題社員とは?
「協調性がない」とは自分の意見や考えに強く固執して、周りへの配慮が欠ける性格のことです。協調性がない問題社員は、同僚との関係が悪くなるだけではなく、顧客ともトラブルを起こす恐れがあります。ここでは、どのような行動が該当するかを詳しく紹介しましょう。
上司や同僚の指示に反発する
協調性がない問題社員の特徴のひとつが、上司や同僚の指示に反発することです。会社はチームで仕事を回さないといけませんが、問題社員が指示を聞かなければ作業は止まってしまいます。結果的に他の社員の負担が増え、チームワークが乱れる要因にもなるでしょう。
問題社員が指示に従わない理由として考えられることは、自分が正しいと思い込んでいるからです。実際のところ、協調性のない社員は頭脳明晰かつ仕事ができるケースも珍しくありません。
しかし上司や同僚を心の中で見下しており、意見が合わなくなると自分のやりたいように進めようとする傾向があります。プライドが高く、自分の能力を過信している人には注意しましょう。
顧客にも嫌われる可能性がある
協調性がない問題社員は、顧客にも嫌われる可能性が高いです。相手企業との交渉の場でも、自己中心的な条件を押し付ける恐れがあります。こういった態度が相手の怒りを買ったら、契約を成立させるのは難しくなるでしょう。
最悪の場合、お得意先との契約が解消されるケースも考えられます。このような事態が起これば、自社にとって大きなダメージとなりかねません。社内での様子もしっかりと確かめつつ、顧客とトラブルを起こす前に対処することが大切です。
多様な価値観を認めない
上司や同僚の指示に従わない社員は、自分の価値観に強いこだわりを見せます。ほかの社員の働き方やライフスタイルを認めず、周囲に愚痴をこぼす人も一定数います。価値観の合わない人間は敵とみなす恐れもあり、周囲とトラブルを生む要因にもなりかねません。
さらに自分の価値観を押し通すがあまり、社内のルールを守らない場合もあります。社内の秩序の悪化が悪化する恐れもあるので、このような行動が見られたらしっかりと指導を行いましょう。
協調性がないことは解雇理由になる?
結論から言えば、協調性がないことも解雇理由にあたる可能性があります。しかし満たさなければならない条件も多く、ハードルは極めて高いでしょう。
労働契約法第16条では、企業が解雇するには「合理的な理由」と「社会通念上相当」の2点が必要と定められています。これらの要素が欠けている場合、権利を濫用したと判断されて今後の裁判で不利になるケースも考えられます。
合理的な理由と社会通念上相当は曖昧(あいまい)な表現ですが、これまでも解雇の正当性を争った裁判がありました。顧問弁護士と連携を取りながら、過去の裁判例に目を通しておくことをおすすめします。
協調性欠如を理由に解雇できる要件
協調性の欠如を理由に解雇できる条件として、主に以下の2点が挙げられます。
- 業務に著しい支障をきたしている
- 注意指導や配置転換の効果が全くない
それぞれの要素を詳しく紹介しましょう。
業務に著しい支障があると客観的に評価できる
まず解雇が認められる条件として考えられるのが、業務に著しい支障があると判断できるときです。そもそも雇用されている以上、社員は会社の方針に従わなくてはなりません。方針に従わない社員は、企業との契約を守っていないといった見方もできます。
また問題社員が同僚に暴言を吐き、相手が精神的に傷を負った場合はパワハラに該当します。このように協調性の欠如だけではなく、ほかの事由の有無で解雇が有効かどうかも変わるでしょう。
一方で「同僚と人間関係を上手く構築できない」という理由だけでは、基本的に解雇は認められません。問題社員の行動と会社に与えている影響の整合性を立証できることが大切です。
注意指導や配置転換をしても改善が見られない
仮に問題行動が見られても、すぐに解雇の判断を下すのは望ましくありません。以下の方法を試しつつ、できる限り反省の機会を与えるようにしましょう。
- 口頭による注意指導
- 書面上の注意指導
- 配置転換(空いている部署がある場合)
- 退職勧奨
まずは、口頭や書面による注意指導から行ってください。懲戒処分としての戒告は就業規則で定めないといけませんが、単なる指導は規定も特に必要ありません。
何度注意しても直らない場合は、ほかの部署への配置転換も検討してみましょう。空いている部署がなければ、無理に行わなくとも問題ありません。
退職勧奨とは自己退職を促す措置であり、解雇よりはトラブルにつながるリスクも少なくなります。これらの対策を講じても効果がなかったとき、初めて解雇を考えるとよいでしょう。
協調性がない問題社員を辞めさせる際のポイントと注意点
協調性がない問題社員を辞めさせるには、いくつかの注意点を把握しなければなりません。これらの注意点を守らないと、相手から訴訟を提起されて多額の賠償金を背負うこともあります。さらに周囲からの評判も下がりかねないので、慎重に対処してください。
就業規則の解雇事由に協調性欠如も規定する
会社が社員を解雇するには、就業規則に沿って行わないといけません。なぜなら解雇は、就業規則において必要的記載事項とされているためです。「協調性の欠如」を起因とするケースも規定しておくと、仮に裁判沙汰となっても有利となります。
ただし先程も説明したとおり、解雇事由には「合理的な理由」と「社会通念上相当」などの要件が必要です。「協調性がない」だけではなく、「業務に著しい支障を与える」などの要件も記載しておきましょう。就業規則の書き方は、顧問弁護士に確認してもらうことをおすすめします。
解雇理由を説明できるようにする
従業員を解雇するうえでは、理由を説明できるようにしなければなりません。その理由は就業規則に基づいており、合理的と判断されるものである必要があります。
解雇理由の通知義務が生じるのは、労働基準法上は対象者から証明書を請求されたときです(労働法第22条1項)。一般的に「解雇理由証明書」と呼ばれており、請求されたら遅滞なく送付することが義務付けられています。対応を怠ると、30万円以下の罰金に処される場合もあるので注意してください。
加えて解雇理由証明書には、請求者が求めている事項以外は記載してはいけません(労働法第22条3項)。思わぬトラブルを招きかねないので、内容に問題がないかを入念に確認しましょう。
指導記録はメモに残しておく
解雇に至るまでのステップは、随時指導記録として残しておくことも大切です。
ただしメモに残すだけでは、相手から「自分に都合の良い情報だけを残している」と反論される恐れがあります。リアルタイムの情報を残すには、自分宛てのメールにて指導記録を送信するとよいでしょう。
指導記録に記しておきたい項目は、次のとおりです。
- 指導した日付と場所
- 指導を行った職員名
- 指導内容および方法
- 指導された職員の態度
責任者で共有できるように、フォルダにて管理してください。
顧問弁護士に相談しながら対処する
ここで紹介した注意点を守ろうとしても、素人だけで対処するのは望ましくありません。法律にもさまざまな規定があり、ケースによって多種多様な対応が求められるためです。
顧問弁護士を雇えば、過去の判例も参考にしながら対応方法を詳しく教えてくれます。仮にトラブルが起こったとしても、迅速に解決法を見出してくれるのが強みです。
また相手も顧問弁護士がいることがわかれば、安易に訴訟を提起しようとは考えないでしょう。トラブルを解決するだけではなく、リスクヘッジを図るうえでも有効です。
問題社員対応について当事務所でサポートできること
下川法律事務所では中小企業経営者様を中心に、顧問弁護士サービスを提供しています。プランは大きく分けて4種類(トライアル・ライト・スタンダード・オーダーメイド)です。それぞれの対応業務や月額費用、対応時間を表でまとめます。
プラン | トライアル | ライト | スタンダード | オーダーメイド |
対応業務 | ・顧問弁護士表示・他士業の紹介・法律相談・社長個人・ご家族の法律相談 | ・契約書の新規作成・診断・修正・従業員の法律相談(1回まで)・優先相談枠確保・内容郵便証明の作成(+トライアルの業務) | ・会社訪問(+ライトの業務) | ・社内研修講師(+スタンダードの業務) |
月額費用 | 3万3,000円 | 5万5,000円 | 7万7,000円 | 11万円~ |
対応時間 | 1時間 | 3.5時間 | 6時間 | 個別見積 |
ほかにも問題社員の対応など、お困りのことがあればご相談ください。
まとめ
協調性がない社員を放置するのは、今後のビジネスにおいても極めて危険です。法律をしっかりと守ったうえで、問題行動が見られたらしっかりと対処しましょう。
解雇はリスクも少なからずあるため、慎重に判断しなければなりません。特に協調性のない社員は頭の良い人も多く、指導が上手く行けば頼れる戦力に変わることもあります。
すぐに解雇の手段を採るのではなく、顧問弁護士に相談したうえで対処法を考えてください。