インターネットが普及した現代、会社経営において注意したい問題として誹謗中傷が挙げられます。社員が匿名アカウントで掲示板やSNSを利用し、会社または同僚を誹謗中傷している可能性もないとは言い切れません。
このような問題行動が見られた場合、会社を守るためにも迅速な対応が必要です。とはいえ懲戒処分を下してもよいか、判断に迷ってしまうでしょう。
この記事では、誹謗中傷を行う問題社員への対応方法について紹介します。誹謗中傷問題について考えたい事業者は、ぜひ参考にしてください。
誹謗中傷を行う問題社員について
誹謗中傷とは、根拠のないデマや人格否定などを発信する行為です。直接相手に伝えたり、SNSを通じて世間に発信したりする方法が挙げられます。
いわゆる言葉の暴力であり、罵詈雑言を浴びせられた人は、心に深い傷を負ってしまうでしょう。会社に関するデマが拡散された場合、業績に大きな支障をきたす恐れもあります。誹謗中傷を行う問題社員を放置せず、しっかりと対応しなければなりません。
会社への誹謗中傷は懲戒処分の対象となる
あまりにも酷い誹謗中傷をした問題社員は、懲戒処分の対象になる可能性もあります。ここで押さえてほしいのが、どのような発言を誹謗中傷と判断するかです。
とくに日本国憲法では表現の自由が保障されているため、この規定との関係性も押さえないといけません。誹謗中傷の定義を見ていきながら、懲戒処分の種類についても紹介します。
表現の自由と誹謗中傷の関係性
日本国憲法第21条では、表現の自由について定められています。原則として私たちには言論の自由があり、誰もが自らの意見を外部に主張できます。
とはいえ誹謗中傷を社会が認めてしまったら、人格権や名誉が侵害される恐れもあるでしょう。こうした表現の自由と人格権・名誉との対立を調整するのが「公共の福祉」です。憲法13条では、国民の権利は公共の福祉に反しない限り尊重されると定められています。
つまり表現の自由が保障されているとはいえ、社会は誹謗中傷を認めているわけではありません。以上から、誹謗中傷は刑事事件や民事事件の対象になることもあります。
誹謗中傷と判断される範囲
まず誹謗中傷と判断される範囲について、ある程度認識しておく必要があります。ここで押さえておきたいのが、刑法および民法における誹謗中傷の考え方です。どのような発言内容が、問題視されるかを解説します。
刑法における誹謗中傷の考え方
誹謗中傷は、刑法の名誉毀損罪や侮辱罪、信用毀損罪に該当する可能性があります。
名誉毀損罪は、事実を摘示して人(会社)の名誉を毀損する行為です。デマはもちろんのこと、公共の利害に関する内容でなければ、事実を世間に広めた場合でも名誉毀損罪が成立します。
名誉毀損罪に該当しなくとも、SNSで会社や社員に対する暴言を吐けば、侮辱罪に該当します。名誉毀損罪と侮辱罪は、親告罪です。刑事事件化したいのであれば、捜査機関に告訴しなければなりません。
一方で信用毀損罪は、事実に反する噂を世間に流布する犯罪です。信用毀損罪は親告罪ではないため、告訴しなくとも警察や検察が独自で捜査できます。名誉毀損罪とは異なり、信用毀損罪は処罰の対象が「虚偽の噂」に限定されているのが特徴です。
民法における誹謗中傷の考え方
誹謗中傷は、民事事件においても扱われやすい問題の一つです。民事訴訟では、基本的に相手に損害賠償を請求する形で戦います。そのため問題社員の投稿が、自社に損害を与えたことを立証しなければなりません。
請求できる金額は、投稿の内容によって大きく異なります。100万円〜200万円で請求するのが一般的ではあるものの、必ずしも全額が認められるとは限りません。悪質性の高い書き込みと判断されれば、裁判所が高額な賠償請求を認めてくれる可能性も高まります。
懲戒処分の種類
懲戒処分と一口にいっても、処分の重さによって以下の種類に分けられます。
- 戒告:口頭による注意
- 譴責(けんせき):書面による注意
- 減給:給料の支給額を減らす
- 出勤停止:会社への出勤を一定期間禁じる
- 降格:役職を下げる
- 諭旨解雇:自己退職を促す(断られたら懲戒解雇へ)
- 懲戒解雇:強制的に解雇する
余程のことがない限り、いきなり問題社員に対して懲戒解雇を下すのは難しいでしょう。まずは軽微な処分を下しつつ、改善が見られない場合に処分を重くするのが一般的です。
懲戒処分の有効案件について
誹謗中傷が見られたとしても、適切な手続きを踏まないと懲戒処分は有効にはなりません。無効であるにもかかわらず、処分を下してしまうと逆に相手から訴訟を起こされるリスクも高まります。懲戒処分が有効になる条件を説明します。
懲戒処分に関する規定を就業規則に明記する
懲戒処分が有効になるには、就業規則にその旨を明記しなければなりません。就業規則を設けた場合、社員全員に周知することも義務づけられています。周知するには、以下の方法のいずれかを選んでください。
- 社内や作業場の見やすいところに備えつける
- 就業規則が記載された書面を社員に配布する
- 就業規則が記載された電子データを共有・閲覧できる状態にする
一般的に法の世界では、遡及処罰が禁止されています。つまり過去にあった問題行動に対して、当時は存在しなかった規定で罰することは認められません。就業規則に問題がないか、弁護士からアドバイスをもらうようにしましょう。
問題社員の誹謗中傷をした証拠がある
問題社員が誹謗中傷をしても、その証拠が残っていないと懲戒処分も難しくなります。有力な証拠と認められるには、スクリーンショットだけではなく、投稿のURLや日時もテキストエディタなどに残す必要があります。
証拠を押さえたあとに投稿が削除されても、しばらくはデータがログに保存されます。しかしログの保存にも期限があるため、迅速に対応しましょう。
誹謗中傷する人は、匿名で掲示板やSNSなどを利用しているものです。匿名で利用していたとしても、IPアドレスをたどれば簡単に本人を特定できます。SNS運営会社やプロバイダ(携帯会社など)に情報開示するときは、裁判手続として行ったほうが賢明です。
一方で単に会社の悪口を書かれただけでは、基本的に情報開示請求には応じてくれません。名誉毀損や著しい侮辱行為にあたるような書き込みが対象となります。
懲戒処分に合理的な理由がある
問題社員が誹謗中傷したとしても、必ずしも懲戒処分が下せるとは限りません。懲戒処分が有効と認められるには、合理的な理由が必要と考えられているためです。このような考え方は、懲戒権濫用法理と呼ばれています。
加えて上述したように、懲戒処分はいきなり重い種類を選ぶことはできません。あまりにも重い処分を下してしまうと、無効とみなされてしまいます。
誹謗中傷による懲戒処分の有効案件
会社に対する文句が投稿されたとしても、すべてが誹謗中傷に該当するわけではありません。どのような投稿が誹謗中傷にあたるかは、客観的な視点から判断する必要があります。懲戒処分が下せるかどうかの判断ポイントについて紹介します。
正当な批判にあたらず名誉を毀損している
投稿の内容が自社にとって気分の悪いものでも、正当な批判とみなされれば誹謗中傷とは認められにくいでしょう。しかし正当な批判を超えて、名誉を傷つけるのが目的になっていたら懲戒処分の有効案件にあたります。
名誉毀損罪の構成要件は、以下のすべてを満たしたときです。
| 構成要件 | 内容 |
| 公然性 | 不特定多数の人が認識できる |
| 事実を摘示した | 事実を具体的に示している |
| 名誉を毀損した | 社会的評価を下げることを投稿している |
たとえば「課長が新入社員と不倫している」ことが事実であっても、SNSで拡散したら名誉毀損罪に該当し、懲戒処分を下せる可能性も高まります。
経営者や社員の人格を否定している
経営者や社員の人格を否定している投稿も、懲戒処分の要件を満たす要素の一つです。「○○社長は能無しで価値のない人物」など、特定の人物を蔑む投稿が該当します。
ただしどこまでの言葉が誹謗中傷にあたるかは、判断が難しいところです。一般的には「バカ」「アホ」といった言葉も、誹謗中傷に含まれると考えられています。
問題社員がこのような文面を誰かにメールで送れば、その人は心に深い傷を負ってしまうかもしれません。自社の社員を守る点でも、懲戒処分が認められやすいといえます。
転職サイトにデマを記載する
転職サイトに根も葉もないデマを記載することも、懲戒処分が有効とみなされる可能性は高いでしょう。主な例として「残業代が一切支給されない」などの書き込みが挙げられます。
今後入社してくれる人材も、企業にとっては重要な存在です。転職サイトにデマが流された場合、応募者が投稿を信じてしまったら、採用率の低下を招いてしまいます。企業の将来を守るためにも、転職サイトの投稿も定期的に確認したほうが賢明です。
問題社員対応について当事務所でサポートできること
問題社員対応についてお困りの方は、晴星法律事務所へお問い合わせください。特に誹謗中傷問題が発生した場合、相手に対して訴訟を提起することもあるでしょう。自社に有利な形で訴訟を進めるには、弁護士によるサポートは欠かせません。
労働紛争に関する費用は、以下のとおりです。
| 着手金 | 交渉:22万円〜 |
| 労働審判:33万円〜 | |
| 訴訟:44万円〜 | |
| 報酬金 | 経済的利益の10% |
ほかにも就業規則の作成やチェックも提供しています。それぞれの価格は以下のとおりに設定しています。
- 就業規則の作成:22万円〜
- 就業規則のチェック:11万円〜
細かい金額は個別で見積もりしているので、まずは気軽にご相談ください。




