介護施設や事業所における法律問題としては、職員との労務トラブル、入居者やその家族とのトラブル、その他介護事故等のトラブルがあります。
以下、順に説明していきます。
職員の労務管理について
介護事業所においては、慢性的な人材不足ということもあり、一般的に職員採用が困難であったり、離職率も高い等と言われています。そして、多くの人材を確保するため、常勤で働けない人についても、夜勤のみや、土日のみ等職員の事情に応じた多様で柔軟な働き方を受け入れていることが多く、雇用形態・勤務時間が多様となります。
このため、労務管理が複雑となりやすいのが、特徴といえます。
労働条件は書面で明示
職員を雇用した際には、雇用契約を結びます。その際、雇用契約書の作成自体は義務ではありませんが、所定労働時間や賃金などの労働条件について、書面を交付して明示しなければならないことが、労働基準法、同施行規則に定められています(労働条件通知書)。
このため、労働条件通知書と雇用契約書を兼用で作成することが一般的となっています。
この点、介護施設においては、労働条件が多様であることは先ほど述べたとおりであるため、就業時間等が書面に明示されていなければ、混乱を生みトラブルの原因にもなり得ますので、労働条件通知書兼雇用契約書を取り交わすのが良いと考えられます。
雇用契約書に記載すべき法定の事項はありませんが、労働条件通知書には一定の事項を記載しておかなければならないので、両者を兼ねる場合には以下の労働条件について記載しておくことが必要です。
・契約期間
・就業の場所
・従事すべき業務の内容
・始業・就業の時刻
・残業の有無
・休憩・休日・休暇
・賃金の内容と締日・支払日
・退職に関する事項
・社会保険の加入状況
厚生労働省の方が労働条件通知書のモデルを公開しておりますので、こちら(https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/keiyaku/kaisei/dl/youshiki_01a.pdf)もご参考いただければと思います。
基本的には厚生労働省の様式に従って記載すれば問題ないかと思いますが、職員が問題を起こした際にトラブルを防止するという意味においては、懲戒処分等の制裁に関しても明記しておいた方が良く、就業規則の定めがある場合には就業規則の適用条文を記載しておくという方法もあります。
弊所においては、顧問弁護士サービスをご利用いただければ、ライトプラン以上で、契約書等書類のチェック、作成について、顧問料の範囲内で行うことが出来ますので、契約書を取り交わす際に法令違反になっていないか判断が出来ますし、後のトラブルにも備えることが出来ます。
未払残業代への対応
介護事業所においては、365日24時間休むことなくサービスを提供している場合もあり、急な欠勤や退職者が出た場合などには他の職員で分担して対応する場合もあるため、勤怠管理は複雑になります。
サービス残業や休日出勤が常態化し、残業代や割増賃金を支払わなかった場合はもちろんのこと、きちんと勤怠管理をしているつもりであっても、適正な賃金となっていない場合があり得ます。
そのような際、ちょっとしたトラブルをきっかけとして、あるいは、退職した職員から、これまでに未払だった残業代として多額の金員を請求されることがあります。
この点、比較的規模の小さな事業者においては、労務管理について専門的な知識を持つ職員の数も少なく、間違った理解をされていることも多かったり、就業規則、給与規程、マニュアルが整備されていなかったり、タイムカードや給与明細が紙で管理されており、多くの業務が手作業で行われていることで、膨大な時間がかかったりミスが生まれたりすることがあります。
そうすると、経営者としてはきちんと管理を行っているつもりであっても、予想外に未払残業代の請求に発展してしまうこともありえるのです。
弊所において、顧問弁護士サービスをご利用頂く場合、上限時間の範囲内で様々な事業上の法律相談を行う事が出来ます。その中で、事業所の勤怠管理に問題がないかについても、チェックを行う事が出来ますし、必要に応じて社労士の先生とも連携して、勤怠管理体制を再検討していくことも出来ます。
未払残業代請求については、こちらのページもご覧ください。
問題職員への対応
他の職員とたびたびトラブルを起こしてしまうような問題職員については、解雇したいと考えられると思いますが、手続きを踏まずに突然解雇すると、後に裁判で争われた際、大きな問題へと発展することがあります。
他方で、後のトラブルを恐れ、問題職員を放置してしまうと、他の職員との関係で安全配慮義務違反に問われかねません。
このため、解決しなければならないことは明らかですが、計画的に段階を踏んで行う必要があります。そうでなければ、解雇無効と判断された場合、バックペイ等で多大な経済的負担を負うとともに、時間的にも負担があり、経営者や担当職員にとっての精神的負担も大きいものです。
これらのことからすれば、問題職員への退職勧奨等に当たっては、慎重を期すため、どのような手順で進めていくのかをあらかじめ顧問弁護士と相談の上、段階ごとに相談しながら手続き進めるのが安心といえるでしょう。
退職勧奨・解雇については、こちらのページをご覧ください。
入居者やその家族とのトラブル
クレーム対応
介護施設や介護事業所を運営していると、入居者・利用者あるいはその家族からクレームが入ることも珍しくありません。施設側に軽度な落ち度があり改善可能な場合など、対応可能で軽微なクレームについては、施設の方で解決できることも多いでしょう。
しかし、カスタマーハラスメントという言葉が問題となっているとおり、悪質なクレームや、逆に、施設側に重大な落ち度があり、解決の難しいクレームについては、自己判断で対応すると、初動の誤りから、かえって問題がこじれてしまう場合もあり得ます。また、問題が長期化すると、ストレスによる職員の離職を招いてしまう恐れすらあるため、クレーム対応は初期段階から適切に行うことが必要となります。
この点、顧問弁護士に早めに相談することで、問題の悪化を防ぐことが出来ますし、適切な対応が可能となります。また、施設による対応が難しくなった場合には、クレーム対応窓口を顧問弁護士の方に移すことも可能となっております。
クレーム対応については、こちらのページもご覧ください。
介護事故
介護事業者においては、十分に注意をしていたつもりであっても、転倒・転落・誤嚥・食中毒等、思いもよらず介護事故が発生してしまうこともあります。
事業者の責任で、介護事故が発生してしまった場合には、入居者・利用者及び家族に、説明・謝罪を行った上で、賠償について交渉を行っていくことになります。
他方で、事業者の側に落ち度がない場合には、事故の経緯を詳細に説明し、事業者の責任がないことを理解してもらう必要があります。
その際、利用者側からしてみれば、怪我をしている等の事実がある以上、事業者に責任がないことをなかなか理解してもらえなかったり、感情的な問題で交渉が前に進まないこともあり得ます。
特に、当事者である事業者が直接交渉に当たると、どうしても、事故の加害者と被害者という関係が前面に出てしまい、冷静な交渉が出来なくなることも多いでしょう。
専門家である弁護士に交渉を委ねることで、法的観点から冷静に交渉を進めることができます。その際、事業所の業務に日頃から精通している顧問弁護士が交渉に当たることで、さらに、スムーズに交渉を進めることが出来るでしょう。
交渉が決裂した場合には、いずれにせよ裁判による解決にならざるを得ませんが、弁護士が、裁判を見据えて説明・交渉し、妥当な解決策を示すことで、利用者の側も、たとえ裁判になったとしてもあまり結論が変わらないのであれば、示談で終わらせてしまおうと納得して、結局裁判にはならないといったケースも多々存在します。
その他のトラブル
事業者や職員からの、事業上のトラブルについては上記以外にも存在しますが、顧問契約を締結していれば日常業務上の法的トラブルについては、広く顧問弁護士に相談できます。
また、弊所においては、事業外の経営者や職員の私的な法律問題(離婚・相続・交通事故等)についても、プランによって対応時間に上限はあるものの、顧問弁護士にご相談頂くことが可能となっております。
弊所の顧問弁護士プランについてはこちらをご覧ください。